地球を暖める? ベースビルトインヒーティング
50年前家を建てようと勉強していた頃、住宅の基礎にストーブを作りこんで、家じゅうを温める暖房を作ろうかと考え、寒地住宅研究所に電話して教えを乞うた。指導官いわく「牧野さん基礎をそのまま暖めたら、地球を暖めることですから、どれほど熱を加えても暖かくはなりませんよ」とのこと。質問の内容は、家の基礎を1.8メートルほど高くして、中央部に焼却炉のようなものを組み込んで、その焼却炉で火を焚いたら、家の暖房はできるかどうか、と言うことであった。
ひねくれ者だから 指導なんかどこ吹く風や
牧野は権威に素直に従わない、変わり者、いや、ひねくれ者であったので、「そんなことは無いだろう、熱を加えても熱は下にはいかないやろう」と。彼は田舎者で子供のころは五右衛門風呂に入っていた。五右衛門風呂は風呂を沸かした時、表面は暖かくなっても、水の下部はまるで冷たい水であったことを知っていたので、「それじゃ、寒研指導官の鼻を明かしてやろうと」ベースビルトインヒーティングを作ることにした。
基礎を1.8メートルと高くして、生活の中央部に大きい集合煙突を作り、その隣に3畳ほどのスペースを用意した。そこに焼却炉を作った。焼却炉の外壁というか外側を、5ミリの鋼板で近くの鍛冶屋さんで作ってもらい、その中に耐熱コンクリートで燃焼炉を作った。燃焼炉の空気の取入れなどは、昔のルンペンストーブと言われた、石炭ストーブからヒントを得て、自分で作った。その燃焼炉で石炭とか薪を燃やして、その煙とか排熱を居間の床をぐるりと回して、集合煙突に入れた。
また燃焼炉の上の部分に45×80センチのダクトを作って、燃焼室の温度を2階に上るようにした。これで2階の2室の暖房とした。玄関とホールの他は全室を温める方式である。老人は脱衣所と風呂の温度差とか、トイレの低温で倒れることがあると聞いていたので、生活部分は全部暖かくなるように設計した。
人は言う それでは燃えないのでは?
ある人は、床にオンドルを作ると、中間負荷となって燃えないよ、と言う方もいた。しかし集合煙突は、径25センチで高さ10メートルもあるから大丈夫と思い炉を作った。燃焼炉の隣合わせに、灯油、ガスを燃料とする燃焼炉を作った。ふたつの炉の回りに、10ミリの銅管をぐるぐると巻き付けて、火を燃やしたら湯が沸くようにした。その湯は居間のパネルに通した。湯の循環は水が温まると上にあがる特性を利用して、火を焚けば自動で湯がパネルに循環するように作成した。電気が無くても暖房できる、防災型の住宅をという希望を満たすために、着々と進めた。このパイブにはガスボイラーの暖房も繋いでいたので、湯がどのように循環するのか、プロの配管工も頭をひねった。この自然循環方式は、牧野の誇りとするものである。
焼却炉の熱の配分、即ち、床を温める熱と、パネルを温める熱の配分が難しく、炉の回りの配管は3度作り直したがそのことは割愛する。
いよいよ火入れ 燃えるかどうか?
耐熱コンクリは作ってから一定期間経過してから、火を入れるように注意書きがあったので、その期間が過ぎ、いよいよ火入れとなった。はじめは工事の時の木の木っ端を入れ、その上に紙を入れて着火した。煙が出てくることは無いが、あまり吸い込みが良いとは言えなかった。それでしばらく待って、強い風が吹いた時、また燃やした。吸い込みは良い。続けて2日ほど燃やしているうちに、オンドル周りが温まったのか、吸い込みは凄くなった。ゴッゴツゴツと音を立てて気持ちよく燃えた。燃えるまでは成功した。
暖かくなるかな
火を炊き始めた時は、居間はコンクリートの上に絨毯張りで仕上げていた。床の温まりが悪いようなので、続けて火を焚いていたら、そのうちに床から、パーン パーン 音が聞こえるときがあった。もしかしてコンクリが割れたのかなと、絨毯を剥がして調べたが、とくに異常は見られなかった。その時分かったことは、コンクリの床は暑くて歩くことが出来ないほどにヒーティングされているということであった。暫くして牧野は床が熱すぎるのは良くないと思い、絨毯を剥がして、床に大理石造りとした。その上に一坪の絨毯を、移動させて敷いていた。それでも時々 パーンと言う音がした。床に異常は見えなかった。しかし、しばらくすると敷石に細い割れ目の筋が見えてきた。それから敷物はおかないで生活することにした。暖房は快適な温度を提供してくれた。朝起きてくると、真冬でも居間温度は20度を保っていた。
この燃焼炉で、石炭5年、薪10年、灯油30年ほど炊いた。その間およそ48年、煙道もオンドルもノーメンテナンスで使用できた。48年経ってドラフトが弱くなったので、煙の入り口付近の穴を大きくして、煙道を掃除した、またしばらく使えるようになった。およそ半世紀ノーメンテで使用できた燃焼炉には、葛西を贈りたい気持ちです。
つづく
2026年01月15日 21:47
